真田プラン
〜「宇宙戦艦ヤマト復活編 第一部」より〜
「次郎も行ったか。……みんな、そろそろ出てきていいぞ」
ギュイーーーン ジャキン！
「真田さん、通信機構には全く問題ありません。各部署との連絡は完全にタイムラグなしです」
「相原、さすがだな」
「真田くん、地下中央波動動力炉の運転は快調だ。いつでも定格の130％の全力で作動できる。世界各地の補助波動動力炉との連動も順調だ」
「山崎さん、ありがとうございます」
「全太陽系観測システムからのデータ転送、中央電子頭脳での解析も、現時点での最高精度で行っています。奴を逃がしはしませんよ」
「頼むぞ太田」
「まかせてください。……隣に南部がいないのが残念だな」
「ははは、南部重工グループの総帥が移民船に乗らないわけにもいかないからな。まあ、彼には地球脱出計画の造船部門で存分に働いてもらったよ」
「おい真田、俺の出番はまだか」
「おう古代、もう少し待て。アナライザーがそっちに急いでいる。あいつを乗せたらすぐ離陸しろ」
「待ちきれないぞ」
「まあ古代さん、少しくらいアナライザーが遅くなったって、俺の操縦ならあっという間に目標まで飛んでみせます。少々揺れますけど、我慢してくださいよ」
「ばかにするな加藤。俺は進と違って駆逐艦乗りだ。多少がぶったくらいで弱音を吐いたりするもんか」
「古代、わざわざお前の弟を抜かしてこの計画を進めてきた意味がわかっているんだろうな。いつぞやみたいにすぐに自爆だの特攻だの考えるようじゃ、弟と変わらんぞ」
「まあそう言うな真田。俺もあれからよく考えた。考える時間だけはたっぷりあったからな。今じゃ、沖田艦長の言葉が身にしみて感じられる」
「そうだ、明日のために、今を生きるんだ」
「オソクナリマシタ」
「よし、アナライザー、来たな。加藤、発進だ！」
「了解！ エンジン全開、最大推力上昇！」
「よし、ポインター艇は出航したな。相原、ガミラスからの連絡はまだか」
「21分前に先遣のフラーケン少将から連絡がありました。もうそろそろ本隊とも連絡がつくはずです」
「――待たせたようだね、地球の諸君」
「総統、よく来ていただきました」
「なに、この宇宙を守るためならお安い御用だ。知っていたかねサナダ君、私は私以外の輩がこの宇宙を征服するなどといったばかげた考えには我慢がならないのだよ」
「総統、弟がお出迎えできないことをおわびいたします」
「気にしないでくれたまえコダイ君。彼とはこの一件がかたづいたら改めて旧交を温めることにしよう。――ヘルマイヤー。地球人の観測網と接続はできたか」
「はっ、総統。フラーケン閣下の亜空間観測艦隊はすでに目標を４次元的に包囲しておりますが、地球人の観測データによって配置を修正いたしました」
「陣容は整ったようだな。ここで、今回の計画を確認しよう。
――まず、目標である次元特異点の軌道を微調整する。これには、海王星外軌道の準惑星30個を使う。２年前から、準惑星群には中性子ガスをまとわせていわば「白色彗星化」を進めてあるから、見かけの質量は目標のブラックホール外皮にも無視できないものになっている」
「なんたってブラックホールからほぼ無尽蔵のエネルギーが供給できましたからね。「白色彗星化」は完璧ですよ」
「ブラックホール様々だな。これらの惑星群は、亜空間エネルギー転送システムによって地球上の波動動力炉からエネルギーを転送して目標至近まで超光速で移動させ、直前で亜光速まで減速して目標にぶつけ、目標の軌道を修正する。こうして目標は、真正面から火星と衝突することになる。
もちろん火星本体はこれによって崩壊するが、その途中で必ず目標中心の次元特異点に命中することになる。ポインター艇はこれを通常宇宙から寸分の狂いもなく観測し、作戦発動の絶妙の瞬間を決定する。
発動の瞬間、火星に埋設した巨大集束波動カートリッジ弾を一挙に炸裂させる。これは旧ヤマト波動砲２万発の命中に相当するエネルギーだ。これが通常空間側からの直接衝撃となる。
これに先立って、地上の全波動動力炉の回路を月要塞のブラックホール砲に直結し、定格最大出力の12倍のエネルギーを持つブラックホールを発射して、発動時間に目標に命中させる。これが空間に対する間接衝撃となる。
さらに、亜空間観測網からの４次元位置データをもとに、総統総旗艦の瞬間物質移送機によって波動カートリッジ弾6000発を目標と同一座標に転移・炸裂させる。これが亜空間側からの衝撃となる。
もともと相手の方から多次元連続体の接続面に亀裂を入れてくれているんだ。この亀裂に対して高次元的な衝撃を与えてやれば、自然と炸裂点周囲の空間と亜空間は過飽和となって安定を失い、唯一エネルギーが逃げ出すことのできる、我々の宇宙でない側へなだれをうって崩壊するだろう。
かくして、ブラックホールだろうと次元の裂け目だろうと、我々の宇宙に影響を与えるようなものはその部分の空間･亜空間ごときれいに消え去ってしまう。しかも多次元空間に対して相当の速さを持って遠ざかっていくから、それをまたこっちに向けようとしても、戻ってきたときにはこの宇宙の寿命が尽きたあとだろう。
まったく、うまい具合にブラックホールと次元の裂け目が近くにあったものだ。そのおかげで目標を簡単に消し飛ばすことができる」
「真田さん、ブラックホールも次元の裂け目も、相手が地球にぶつけるために持ってきたんですよ」
「おお、そうだったな太田。これは気がつかなかったよ。まあ、ろくな知識もなしに次元と空間をいじって他の宇宙を侵略しようなどというのは、科学と宇宙に対する冒瀆だな。そんな奴らの企ては、正しく科学を利用して阻止せねばならん」
「真田さん、そろそろ準惑星群が目標に衝突を始めます」
「よし、古代！ しっかり見張って針路をずらすなよ！」
「わかった！ 加藤、ぎりぎりまで突っ込むぞ！ アナライザー、とびっきりのデータを送ってやれ！ 太田、受信準備はいいか！」
「ええ、行きますよ！」
「マカセテクダサイ！」
「バッチリです！」
「総統、よろしくお願いいたします」
「安心したまえ。波動カートリッジ弾は全弾移送範囲に集結している」
「それじゃみんな、正確に行こう！ 科学の力で地球を救うんだ！」
「了解！！」
真田さんが本部に残ったシーンで、「ここで何かしてくれなくちゃ真田さんじゃない！」と思って妄想をふくらました結果の産物がこれです。
地球と真田さんの科学力、技術力に限界なんてないはずです。
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