手の衛生状態をよくし、手をきれいに保つことは、病気にかかることや、ばい菌を他の人にうつすことを防ぐための大事な一歩です。
手をせっけんときれいな流水で洗わないことによって、いろいろな病気が広がってしまいます。きれいな流水が利用できない状況というのは、世界のあちこちの場所で普通に見られるものですが、そういう時にはせっけんと利用可能な水で手を洗いましょう。
せっけんと水が利用できない時には、60％以上のアルコールを含む手指消毒剤を使って手をきれいにしましょう。
どんな時に手を洗うの？
食物を扱う前、扱っている時、扱ったあと
食事の前
病気の人の世話をする前とあと
傷の手当てをする前とあと
トイレを使ったあと
おむつを替えたあとや、トイレに行った子供の体をきれいにしたあと
鼻をかんだあと、咳やくしゃみをしたあと
動物や動物の餌、動物の糞尿に触れたあと
ペットやペットの餌を扱ったあと
ごみを触ったあと
どうやって洗うの？
きれいな流水で手をぬらします。冷水でもお湯でも構いません。蛇口を閉めます。せっけんをつけます。（注１）
手をこすり合わせてせっけんを泡立てます。手の甲、指の間、爪の下も忘れずに。（注２）
最低20秒はもみ洗いしましょう。タイマーがいりますか？「ハッピー・バースデー」の歌を最初から最後まで２回繰り返せば、20秒になりますよ。（注３）
きれいな流水ですすぎます。（注４）
きれいなタオルで拭くか、風で手を乾かします。（注５）
（注１）
もし流水でなく、容器に入ったままの水で手を洗うと、以前にそこで手を洗った手の汚れが自分の手についてしまうかもしれません。ですから、きれいな流水を使う必要があるのです。
ただし、飲めないような水でも、必要な場合にはそれで手を洗って健康によい影響を及ぼすには十分です。
水の温度は細菌を除去できる割合に影響しません。ただし、熱すぎるお湯は手をひりひりさせますし、環境への負荷が大きくなります。
手をぬらしたあとに蛇口を閉めるのは水の節約のためです。健康に影響するほどの数のばい菌が蛇口から手にうつる可能性を示した研究はありません。
せっけんで手を洗うのは、水だけで洗うよりも効果的です。
なぜなら、せっけんに含まれる界面活性成分が皮膚から泥や細菌を浮かせて取れやすくするからです。
また、人は、せっけんを使った時の方がよりていねいにもみ洗いをする傾向があります。これによってばい菌が落ちやすくなります。
現在までの研究によれば、殺菌効果がある手洗いせっけんといっても、普通のせっけんより健康上有効であるわけではありません。（一般家庭において。医療従事者についてはまた別です）
これにより、アメリカ連邦農務省は、2016年9月に以下の通達を出しました。一般的な「抗菌」せっけんの成分として使われる19の物質（トリクロサムなど）は、普通のせっけんより有効であるとは言えないため、今後一般公共において商品に表示することを禁ずる、という内容です。
この規則は手指殺菌剤やふき取り紙、また医療関係で使用する製品には適用されません。
（注２）
手をこすったりもんだりすることは、泥や油や細菌を皮膚からはがすような摩擦力を生みます。細菌は手の表面のどこにでも生息しますが、特に爪の下に集中しています。手の全体をもみ洗いする必要があるのはそのためです。
（注３）
手洗いの長さはどれくらいが望ましいかというのは難しい問題です。
手洗いの長さを変えて、それらの間で健康的効果を比較した研究はほとんどありません。細菌の大部分を落として、疾患を引き起こさないだけの数にまで減らす時間を計った研究はありますが、健康への影響を測ったとは言えません。手の上の細菌数を減らすだけでは、よい健康につながるとは必ずしも言えません。
望ましい手洗いの長さはいろいろな要素に左右されます。手についた泥の種類や量にもよりますし、手を洗う人の個人的差異も影響します。
たとえば、外科医は、直接病原菌に触れ、弱った患者に深刻な感染をもたらす可能性がありますから、家庭で食事を用意する時の主婦よりも長い時間手を洗う必要があるでしょう。
ともあれ、実際のところでは、15〜30秒かけて手を洗う方が、それより短い時間よりも多くのばい菌を落とすことができるとされています。
それに従い、多くの国や国際機関が推奨する手洗いの時間は20秒ほどとなっています。加えて、手を乾かすのに20〜30秒かけることも推奨されています。
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訳注：ここでは「ハッピー・バースデー」２回で20秒と書いてあるが、実際にやってみると１回でじゅうぶん20秒になってしまう。アメリカではこの歌を日本より速く歌うのだろうか？ 訳者の実験では、「桃太郎」の歌の一番と二番を歌うと20秒になった。
（注４）
せっけんと摩擦によって、泥や油、病原菌を含む細菌類は手の表面からはがれますから、水ですすぐことによってそれを取り除くことができます。せっけんを洗い落とせば、手洗いのあとのかゆみもおさえられます。
容器にため置きした水ですすぐのは、以前に手を洗った時の汚れが再び手につく可能性がありますので、きれいな流水ですすぐのがよいのです。
手をすすいだあとにペーパータオルで蛇口を閉めることをすすめる人もいますが、その方法は水とペーパータオルをよけいに使うことになりますし、そういう方法がより健康によいと証明する研究はありません。
（注５）
ぬれた手にはばい菌がつきやすいですから、手を洗ったあとには乾かさなければなりません。とはいえ、手を乾かすのに最もよい方法は何か、という問いに対する答えははっきりしていません。
これについての研究もほとんどなく、研究者の間で意見が対立する点もあります。加えて、現在までの研究で認められているのは、手を乾かす方法によって手の上の細菌数がどうなるか、ということだけで、病原菌に着目したものではありません。手の上の細菌数と健康がどのように関連するかということもよくわかっていません。
とはいえ、いずれの研究によっても、清潔なタオルを使うか、空中で乾かすかするというのがよりよい方法であるとされています。
せっけんときれいな流水がない時は？
ほとんどの場合、せっけんと水で洗うのがばい菌の数を減らす一番の方法です。もしせっけんと水が利用できないなら、60％以上のアルコールを含む消毒剤を使いましょう。（注６）
アルコール消毒剤はすばやく手のばい菌を減らすことができますが、全ての種類のばい菌を除去できるわけではありません（注７）し、有害な物質を落とすことができないこともあります。（注８）
手が目に見えて泥や油で汚れているときには、手指消毒剤は有効ではありません。（注９）
（注６）
多くの研究により、60％から95％のアルコールを含む消毒薬は、それより低い濃度の消毒薬やアルコールを含まない消毒薬よりばい菌を殺す能力が高いことが示されています。
非アルコール性の手指消毒剤は、１・ばい菌の種類（グラム陰性／陽性細菌、クリプトスポリジウム、ノロウイルスなど）によっては効果が異なる場合がある ２・ばい菌に消毒薬への耐性を持たせることがある ３・ばい菌の繁殖をおさえるだけで、直接ばい菌を殺すものではないことがある ４・アルコール性の手指消毒剤よりもかゆみなどを起こす可能性が高い とされています。
（注７）
アルコール性の手指消毒剤は、正しく使えば多くの種類の細菌を効果的に無力化することができますが、十分な分量を使わなかったり、消毒剤が乾く前にふき取ったりしてしまうと、効果は低くなります。
また、手指消毒剤よりせっけんと水の方が、クリプトスポリジウムやノロウイルス、クロストリジウム・ディフィシルのようなばい菌類をより効果的に除去したり無力化したりできるのです。
（注８）
あまり多くの研究がなされているわけではありませんが、手指消毒剤は多くの有害化学物質を除去したり無害化することはできないと考えられます。
ある研究では、殺虫剤を扱ったあとの手を消毒剤で洗ったところ、体内の殺虫剤の濃度はかえって上昇したという結果が報告されています。
有害な化学物質に触れたあとには、せっけんと水でていねいに手を洗うか、中毒情報センター（訳注：日本では電話番号 072-727-2499 か 029-852-9999）の指示に従ってください。
（注９）
多くの研究によると、手指消毒剤は、手が病原菌に触れる機会が多い病院などの臨床場面ではよくその能力を発揮しますが、一般的に、ひどく泥や油で汚れた手には効果がないとされています。
少し泥のついた手の上のある種のばい菌に対しては有効だとの研究もありますが、手というものは、一般生活の上でもひどく油や泥がついてしまうことがあります。たとえば、食物を扱ったり、スポーツをしたり、庭仕事をしたり、キャンプや釣りに行ったりしたあとなどです。そういった場合には手指消毒剤はうまく働きません。
そういう場合にはせっけんと水で手を洗いましょう。
消毒剤の使い方
説明書を読んで必要な量を計り、一方の手の手のひらに消毒剤を受けます。
手をもみ合わせます。
手のすみずみまで消毒剤をのばし、乾くまで手をもみ続けます。（注10）
注意！ アルコール消毒剤を飲み込むと、アルコール中毒になることがあります。乳幼児の手の届かないところに保管しましょう。（注11）
（注10）
この使い方の説明は、ＣＤＣ推奨の方法を簡略化したものですが、両手のすべての表面に消毒剤をすり込むように、という指示だけで、ＣＤＣの定めるより詳細な方法と同じくらいの感染予防効果があることがわかっています。
（注11）
エチルアルコール（エタノール）を主成分とする手指消毒剤は、正しく使えば安全ですが、二、三口を超えて飲みこむとアルコール中毒を起こす可能性があります。
2011年から2015年の間に、アメリカ中毒管理センターは、子供が手指消毒剤を飲み込んだという通報を８万5000件近く受けています。
子供は、いいにおいがしたり、鮮やかな色をしたり、気を引くようなパッケージに入っていたりすると、消毒剤を飲んでしまう可能性があります。
手指消毒剤は幼児の手の届かないところに保管し、大人が見ているところで使わせなければなりません。
子供の手では開かないキャップにすることで、手指消毒剤による幼児の中毒事故を減らせるかもしれません。
より年長の子供や大人は、酔っぱらうことを目的として、意図して手指消毒剤を飲むこともあります。
どうして手を洗うの？
手をきれいに保つことは、病気を防ぎ、ばい菌を他の人に移さないための大事な一歩です。せっけんときれいな流水で手を洗わないと、いろいろな病気を広めてしまうかもしれません。
ばい菌はどうやって手に付着し、人間を病気にさせるか
糞便（うんち）は、人のものでも動物のものでも、いろいろなばい菌の巣です。サルモネラ菌、Ｏ１５７大腸菌、下痢を起こすノロウイルスなどです。また、アデノウイルスや手足口病などの呼吸器疾患の感染源にもなります。
これらのばい菌は、トイレを使ったり、おむつを替えたりする時だけではなく、他の気がつかないような時にも手に付着することがあります。生肉を扱う時に、肉に目に見えないほどの動物の糞がついていた場合などです。
人間の糞便１グラム（ゼムクリップ１個の重さ）の中には、一兆個のばい菌が含まれていることがあります。
ばい菌は、だれかが咳をしたりくしゃみをしたり、汚れた手で触れたりした時に、どこかのものの表面に付着し、そのものをさわった人の手に移ることがあります。ばい菌がついた手を洗わないと、人の手から手へばい菌が移っていくことによって、人を病気にすることがあります。
手洗いは病気や感染の伝播を防ぐ
せっけんで手を洗えば、手からばい菌を落とすことができます。これによって感染を防ぐことができるのです。
人は気がつかないうちに自分の目や鼻や口に手を触れているものです。ばい菌はその時に、目や鼻や口から体の中に入り、人を病気にしてしまいます。
手を洗わないと、手についたばい菌が、食べ物や飲み物を買ったり料理したりする時に、その食べ物や飲み物に移ることがあります。ばい菌の中には、食べ物や飲み物の中でたくさんに増え、食べたり飲んだりした人を病気にするものがあります。
ばい菌がついた手から、手すりやテーブルの上、おもちゃなどにばい菌が移り、そこから別の人の手にばい菌がつくこともあります。
手を洗ってばい菌を落とすことによって、下痢や呼吸器病を防ぎ、皮膚病や目の病気から身を守ることができるのです。
手洗いを広めることは、人々や地域を健康に保つひとつの方法です。手洗いを広めることによって、次のように病気を減らすことができます。
下痢にかかる人を23〜40％
免疫が低下した人が下痢になることを58％
風邪のような呼吸器疾患を16〜21％
胃腸病による児童の長期欠席を29〜57％
減らすことができるのです。
世界中で、手を洗えない子供が病気に脅かされています
疫痢と肺炎は、幼い子供を死に至らしめる病気の両筆頭で、世界で一年に180万人の5歳未満の子供が死んでいます。
せっけんで手を洗うことで、疫痢にかかる幼児の３人にひとり、肺炎のような呼吸器感染症にかかる幼児の５人にひとりを守ることができるでしょう。
世界中の人々が水で手を洗っていますが、せっけんが使える人の数はとても限られたものです。せっけんで手を洗えれば、もっと効率よくばい菌を落とすことができるというのに。
学校で手洗い教育を行い、学校にせっけんを置くことは、せっけんで手を洗う人口を増やすことになります。
小さいころからよい手洗いの習慣を持つことは、場合によっては子供の発達を助けることにもなります。
世界の中で、トイレを使ったあとに手を洗う人口は、わずか19％だと言われています。
手洗いは耐性菌との戦いに勝つための方法です
病気の予防は、人々が使う抗生物質の量を減らし、耐性菌の発生を減らします。
手洗いは下痢を起こす病気の30％、風邪などの呼吸器感染症の20％を防ぐことができます。
抗生物質は、このような病気の中で、本来必要のない場合に処方されていることがあります。よく手を洗うことによってこれらの感染症を減らすことができれば、抗生物質の過剰投与を減らすことができます。過剰投与は、世界中の耐性菌の発生の一大原因になっているのです。
手洗いは、すでに耐性を持つ病原体による病気を防ぐこともできます。耐性菌による病気は治すことが難しいのです。
手袋を使う前と後に手を洗いましょう
手袋を使って家事をする時にも、手洗いは大切です。ばい菌を広めてしまうのを防ぐために、手袋をはめる前とはずしたあとには必ず手を洗いましょう。
手袋をはめた時に、あなたの手から手袋へばい菌がうつってしまう可能性があります。ばい菌のついた手袋からは、手袋をはずす時に手にばい菌がついてしまう可能性があります。
ばい菌を見過ごすことで、食べ物を汚染してはいけません。あなたと大切な家族の健康を守るために、料理する時には必ず手洗いをする習慣をつけましょう。
手洗いを家族の習慣にしましょう
手を洗うことで、下痢性の疾患の３分の１、かぜやインフルエンザのような呼吸器疾患の５分の１を防ぐことができます。
手洗いは、ばい菌を広げることを防いで子供や大人の健康を守るための、簡単で、お金もかからず、しかも効果的な方法です。家族が健康ならば、学校や仕事やその他の活動を休むのを心配することもありません。
子供に上手な手の洗い方を教えましょう
親など、子供の世話をする人には、子供に手洗いを教える重要な役目があります。小さいうちに手洗いを教われば、それは一生の間健康を守ってくれる習慣になります。
子供に手洗いの５要素――手をぬらす、こする、もみ洗いをする、すすぐ、乾かす――と、トイレに行ったあとや食事の前など、大事な時に手を洗うことを教えましょう。
手洗いを楽しくする方法を考えましょう。手洗いの歌をつくったり、手洗いにつながるごっこ遊びをするのもよいでしょう。
いつも手洗いに気づくようにしましょう
手洗いの習慣をつけるには時間がかかります。
まず、子供たちに、いつどのように手洗いをするかいつも気づかせるように注意をうながす必要があります。
特に大事なのは、トイレのあと、食事の前、ペットにさわったあと、外で遊んだあと、せきやくしゃみをしたり鼻をかんだりしたあとに、手洗いをするようにうながすことです。
一度手洗いが習慣になり、子供たちの生活の一部になれば、子供たちは一生それを続けるようになるでしょう。
手洗いのお手本を見せましょう
小さな子供は、生活の中で大人のすることをまねる性質があります。あなたが習慣として手を洗うようにすれば、子供によいお手本を示すことになるのです。
せっけんと水がない時には？
せっけんと水で手を洗うのは、ばい菌を取り除く一番の方法です。もしせっけんと水が使えない時には、最低でも60％のアルコールを含む手指消毒剤を使い、その後せっけんと水が使えるようになったらすぐに手を洗いましょう。
ウェットティッシュについて
ウェットティッシュを使えば、見た目は手がきれいになりますが、ウェットティッシュはばい菌を落とすようにはできていません。ＣＤＣがおすすめするのは、あくまでせっけんと水で手を洗うことです。
家庭で、学校で、遊びの中で、手洗いを忘れずに！ 手洗いを習慣にしましょう！
This page is made of translations of articles from the website of Centers for Disease Control and Prevention concerning hand washing.
(Translated on 30 January 2020 by Daimyoshibo)
おまけ１
ＣＤＣの手洗いキャンペーンのためのポスター、“KEEP CALM AND WASH YOUR HANDS.”
これは戦時中のイギリスで作られ、近年デザイン的に再評価されたポスター、“KEEP CALM AND CARRY ON”「平静を保ち、日常を続けよ」のパロディ。（ＣＤＣのページ）
おまけ２
YouTube から「せっけんで手を洗おう」の歌。これはＣＤＣとは関係なく、日本の「手洗い運動推進本部」という団体が昭和47年に各地の学校に配ったソノシート（薄いプラスチックのシートに溝を刻んだアナログレコード）から複写したもの。アップ主に感謝。（参考サイト１） （参考サイト２）
(added on 5 February 2020 by Daimyoshibo)