私の敬愛してやまない内田弘樹先生※↓が作った萌え絵表紙の戦史同人誌が一部の論客から「不謹慎」「幼稚」などと叩かれているようである。
基本的に私は萌えミリにあまり興味がないので（あっ、よせ、日本海海戦のページを見るな）、正直「ﾌｰﾝ」としか思わない。
1980年代からのウォーゲーマーなら、「不謹慎」攻撃など浴びすぎて不感症になっているくらいだ。それに対しては、
「戦争に対する理解を深めるツールとしてゲームは極めて有用だ。戦争を忌み嫌うあなた方より我々の方が戦争の悲惨さ含め戦争についてよく知っている」
と返していたので、「ゲートウェイ」として萌え絵を使うことにそれほどの違和感はない。
世の中には缶詰や医療機器の同人誌でさし絵が萌え絵のものとかもあるが、それらと同列に扱っていいものだと思う。
それが「幼稚」と言われるなら幼稚は幼稚だろうが、世にあまたある道楽で「幼稚」でないものなどあるだろうか。
俳句だってただの言葉遊び、将棋だってただのボードゲーム、写真だって音楽だってただの遊びである。その道のプロになるわけじゃないんだろ？
ひとの道楽をけなすのは簡単だ。だがそれは、「俺こういうの嫌い」以上の指摘になっているだろうか？ 嫌うのは勝手だが、単なる自分の好き嫌いをナマで公共の場所にたれ流して、いっぱしの「批判」面をすることは、精神的に「幼稚」ではないか。
脊髄反射で嫌いなものをけなす前に、「なぜ自分はこれが嫌いなのか」「この分野について自分が許せる範囲はどこまでか、それはなぜか」を自己分析してほしい。そうして初めて、それは「批判」たりうるだろう。
「萌え絵ミリタリーは不謹慎」なるほど。ではそうでないミリタリー同人誌は？ 学術的な軍事研究論文は？ 軍事を扱う床屋政談は？ 兵器を誇示する自衛隊のＰＲ動画は？ 戦国武将の女体化は？ 新選組のＢＬは？ 西部劇映画は？ アレクシエーヴィチのコミカライズは？ 剣道は？
萌え絵ミリタリーを指弾して社会の得る利益は何だろう。萌え絵ミリタリーを許容して社会の被る不利益は何だろう。
「不謹慎」ということばは便利である。パーマかけるのは「不謹慎」だったし、女性が髪の毛や顔を露出して街中を歩くことも「不謹慎」だよね。
私の個人的な感覚として、ルソンやニューギニアなどの戦記が萌え絵化されるのには多少の違和感がなくもない。
しかし一方で、独ソ戦やドイツ本土防空戦の戦記の萌え絵化は「あり」かな、と思うので、不謹慎の基準なんてどうにでもなる、当てにならない、他人に押しつけられないものであると思う。
私は「艦隊これくしょん」はやってないし、どっちかというと嫌いである。でも、楽しんでいるプレイヤーからそれを取り上げようとは思わない。
「酒も煙草も博打もやらず、百まで生きた馬鹿がいる」人生には愚行もあっていい。
「ビルマで日帝がやった蛮行を棚上げして現地住民と談笑する日本軍兵士を描くのは悪質なプロパガンダ。キノコ雲を背景にエノラ・ゲイのクルーが広島市民と談笑する萌え絵を許せるか」というのは精度の悪いいちゃもんだな。
例として提示すべきは、「焼け野原になった広島でハーシーを配る米兵に群がる広島の子供たち（萌え絵）」じゃないかね。
ビルマ人は無表情ないしは顔を描かずに、日本の水兵だけを萌え絵化した表紙の方がお好みだというのだろうか。それはそれでひどいと思うけどね。
作者がろくでなしだとか絵柄が気に入らないとか自分のジャンルにはかからないとか、そういう理由で、「叩いてもいいか、今回のこれは」と思考停止してしまった人は、いつか彼を「売った」ことを心底悔やむことにならなければよいが。
すべてのものの90％は屑なのだから、屑を屑と呼んで唾を吐きかけるのはたやすいことだ。
自分が屑と呼ばれて唾を吐きかけられる直前までは、その本当の意味はわからないのかも知れない。
その時になって、「俺は糞じゃない、味噌だ！」と叫んでも、「似たようなもんだろうが」と言われて終わりなのだが。
私が半世紀使ってきた言語の世界では、
こういうの↓
「グロテスク」「女体に飢えてる」「もともと歴史を理解しようとする気はないんでしょうね」「ポルノですよ、ズリネタ」「萌えミリ趣味って戦争の過度な美化に繋がって更に歴史修正に繋がるからイヤなんだよ」「キモイ。」「「見なけりゃいい」と言いつつツイートに反応してクソリプをしている人たちはツイートなど見なけりゃいいんじゃないかね。」
↑こういうの
を断じて「批判」とは呼ばない。ただの罵倒。いちゃもん。マイナスの感情の醜いたれ流し。
それを名だたる論客の方々が、指摘もせず批判もせず、尻馬に乗って嬉々としながら罵詈雑言の程度のひどさを競っている光景は見るにたえない。正気に戻ってくれよ。